【龍指〜異聞奇譚】

東京都世田谷区の某所で密やかに伝えられる『龍指(りゅうし)』

鹿島神宮から富士山の間に在るとされる「光脈筋」の伝説。

この光脈筋の上に存在していると伝えられる世田谷の某所にて
旧くはその地の高台から見える富士山頂には時折龍が現れたと云う。

〜龍の指切り〜

時は平安中期と伝えられているが、もっと前の時代かもしれない…

長引く日照り続きに際し、民衆が行なった雨乞いが通じて
日中の明るい時間にも関わらず、辺り一帯が真っ暗となり
勢い溢れんばかりに轟く雷鳴と共に姿を現した水神の龍が
富士山頂から一瞬にしてこの地に飛来して上空を覆った。

龍が天空を二周り三周り…と、ゆっくり旋回して雲を描き
今まさに大地に雨をもたらそうとした、その時…
日頃の「人々の都合が良い時ばかりの神頼み」が
遂に雷神の逆鱗に触れ、大地に向けて稲妻が放たれた。

ところが、それを察知したかのように龍のうねりから生じた突風により
雷神は体制を崩し、放たれた一条の稲妻の先端は龍の指に直撃した。

雷鳴と悲鳴が交錯するように響き渡る中、龍の指は切断されてしまった。

雄叫びのような音と共に、龍は竜巻きへと姿を変え
砂塵を撒き散らしながら光脈筋を辿るように舞い戻り
やがて富士山頂付近でその姿をくらませた。

その後、この地から龍を目撃した者はいない…。

切断された「龍指」は、御神体として祀られ
以来この地では、困った時にお願いするのではなく
感謝の気持ちを伝え祈るようになったと云う。

そんな感謝の気持ちを忘れない為の「ゆびきり(ちぎり)」が
雷神様と交わされたという月成の想作異聞奇譚であります。

【2009年7月:記】


〜龍指壱(オブジェ)、龍指弐(根付)、龍指参(指輪)〜

「龍の指切り(契り)」 という御伽話がテーマの想作物です。



〜龍指壱(オブジェ)〜
素材:純銀(本体)、テクタイト(爪部)、象牙(指骨)
制作:2006年秋




〜龍指弐(根付)〜
素材:純銀(本体)、テクタイト(爪部)
制作:2010年秋




〜龍指参(指輪)〜
素材:動物の骨(本体)、染色:赤しそ、菊茶葉
制作:2014年秋
【想作メモ:造形染色



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