【引っ晴れ】

福を探している裸の鬼が、豆の中を覗きこんでいる意匠です。

鬼門である丑寅の年を経て、丑の角と寅のパンツを脱ぎ捨てた鬼が
卯を迎えるために、豆の中に福を探し求めていますが
鬼の背中は蛹のように裂け始め、卯の耳が出てきています。
既に鬼は卯に変化(へんげ)しはじめているようです。

豆の裏側には鬼が脱ぎ捨てた
丑の角のカチューシャと寅柄のパンツが
象嵌されています。

鬼の頭側を上向きにして北として見ると
左下の南西(未申)側は裏鬼門に位置します。

役割を終えた鬼が裏鬼門から退散するよう
未と猿が案内役を担ってくれています。
猿は「鬼さんこちらの手のなる方へ」と
手を叩きながら導いてくれています。

豆の内側にはお福さんが彫り込まれており
「福はこちらよ」とばかりに何かを引っ張っているようです。
(紐穴に紐を通す事で引っ張られているように見えます)

お福さんの横では福助が「福へようこそ!」と
お辞儀しながら歓迎してくれています。

月に棲む卯の顔と手が月の中から見え隠れしています。
お福さんに引っ張られているのは卯でした。

鬼の背中から卯の耳が出ていましたが
「福はこちら側よ」とお福さんに引っ張って貰っているようです。

【材料】
・タグアナッツ
・象嵌:象牙、鼈甲、黒水牛角
・純銀

丑寅の年が去り「晴れやかな年になりますように」という
制作者二人の共通の願いが込められている作品です。

作品名「引っ晴れ」の由来

卯には英語の「hare」で野兎の意ですが
これをローマ字読みにすると「ハレ」 となり
晴れやかな年になるよう、お福さんが
卯(野兎)を引っ張ってくれています。

また、Run with the hare and hunt with the houndsには
「どっちつかず」という意味があり、「鬼の背中から出ている卯(耳)と
お福さんに引っ張られている内側の卯」の意匠にも通じています。

制作:2011年

高円宮コレクション





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